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“政治とカネ問題”で安倍派が一掃!? それでも免れぬ内閣総辞職は3月予算成立後か…

岸田文雄
岸田文雄 (C)週刊実話Web 

政治資金パーティーをめぐる自民党の裏金問題で、東京地検特捜部は安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)を家宅捜索した。「政治とカネ」をめぐる同事件は、年明けさらに大きな発展を見せるのは、確実視されているが一方、永田町では岸田内閣の退陣が織り込まれ始めた。

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「うちの派閥は大丈夫なのか。ちゃんとうまくやっているんだろうな」

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岸田首相は12月10日夜、側近の木原誠二自民党幹事長代理を首相公邸に呼び、珍しく厳しい口調で問い詰めた。NHKが、岸田派(宏池会)も過去5年のパーティー券収入のうち「数千万円分の不記載がある」と報じることが分かったからだ。

5年間で計5億円もの不記載がある安倍派は、1000万円以上のキックバックを受けていた議員が20人前後もいるとされ、特捜部から狙い撃ちされている。二階派も不記載総額は1億円以上で同じく捜査のターゲットとなっているが、この2派閥だけでなく岸田派も長年にわたり、政治資金の不記載を続けてきたのだ。

NHKなどの報道を受けた岸田派関係者がこう話す。

「宏池会には裏金があるんだ。別にうちだけじゃない。どの派閥にもある」

問題の不記載額は5年間で3000万円程度とされるが、この関係者は裏金との関係性については言葉を濁す。だが、不記載分がそのまま原資になっている可能性は濃厚だ。

では、いったい何に使っていたのか。

「選挙の陣中見舞いだよ。でも、それだけじゃない。一番多く使ったのはこの前の総裁選だ」(同)

2021年9月の総裁選で岸田氏は、河野太郎デジタル担当相や高市早苗経済安全保障担当相、野田聖子元総務相らと戦って勝利し、首相の座をつかんだ。その際に裏金は、他派閥や無派閥議員を取り込む〝実弾〟として使われたというのだ。

「相場は1人100万円だった。首相と親しいある閣僚経験者は、中堅、若手議員を4人連れてくるというので、本人の分と合わせて500万円渡した」(同)

総裁選が公職選挙法の対象外とはいえ、政治資金パーティーで裏金をつくり、そのカネで総理の座を買ったとなれば、政権へのダメージは計り知れない。そのため、これが事実なら首相の退陣どころか、自民党政権そのものが吹き飛びかねない状況とも言えるのだ。

筋書きは“会計責任者の凡ミス”

半世紀も総裁選を見てきた、自民党職員が指摘する。

「田中角栄は福田赳夫に勝つために、議員1人に3000万円を配った。その後、相場は1000万円、500万円、今回は100万円と下がったが、総裁選を戦うには今も1億円は必要といわれている。それを考えれば、岸田派が実弾を配った先はまだまだあるはずだ」

ちなみに、先の岸田派関係者によると、NHKなどの報道を受けて危機感を強めた同派幹部らは急きょ対応策を協議。パーティー券の販売収入について「どの議員が売り上げたか分からないものは会計責任者が計上しないようにし、結果として不記載になってしまった」と説明するよう意思統一がなされたという。

だが、その付け焼き刃の〝言い逃れ〟は、意外にも功を奏する可能性が高いとみられている。同事件は故安倍晋三氏が首相時代に、自らの疑惑隠ぺいに有利な検事総長人事を画策し、検察庁と禍根を残したことが発端といわれ「特捜部の狙いは、あくまで安倍派」とみられているからだ。

「法務・検察首脳部は、過度に政治に影響を与えて『検察ファッショ』と批判されることを嫌い、むやみな捜査の拡大を避け安倍派に焦点を絞っている。岸田派については同派の弁護士と呼吸を合わせ、『会計責任者の凡ミス』との筋書きで着地させる公算が高い」(前出・岸田派関係者)

また、過去に派閥絡みの「政治とカネ」問題で対応に追われた、自民党関係者もほぼこれと同意見だ。

「今回の裏金事件で政治資金規正法違反として立件されるのは安倍、二階両派だが、徹底的にやられるのは安倍派だけだろう。永田町では岸田、麻生、茂木の主流3派には及ばないとの見方が根強いのです」

気になるのは今後、安倍派がどのように〝血祭り〟に上げられていくかだが、この自民党関係者によれば「派閥の会計責任者は当然として、政治家の立件は10人近くになる可能性がある」という。

その筆頭とみられているのが、過去5年の事務総長経験者のうち、松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相、高木毅党前国対委員長の3人に、萩生田光一党前政調会長、世耕弘成党前参院幹事長を加えた安倍派「5人衆」。さらに、4000万円以上のキックバックを受けていた大野泰正参院議員と谷川弥一衆院議員、池田佳隆衆院議員も立件されるとみられ、他にも金額は少ないが、裏金づくりの悪質度が高い議員数人がリストアップされているという。

会計責任者は裏帳簿も提出

特捜部から任意の聴取を複数回受けた、安倍派の議員秘書が「出所の秘匿」を条件にこう話す。

「派閥の会計責任者は事務総長経験者から具体的な命令や指示がなかったか、検察に厳しく追及されている。会計責任者は世耕氏がNTTから連れてきた人物で、この世界に入って日が浅いためほぼ完落ち状態。キックバックのリストやパソコンの中の裏帳簿、代々の事務総長とやり取りしたメールやメモ書きなど、検察が求めるものはすべて任意提出したとも聞いている」

また、特捜部は強制捜査で派閥事務所から押収した資料とともに、会計責任者の供述内容を分析。指示の裏付けとなる証拠固めを進める一方、証拠が弱ければ「善管注意義務違反」(=管理者の注意義務違反)を援用してでも立件できないか、捜査を進める構えだという。

議員秘書が続ける。

「特捜部の聴取内容からすると、キックバックが50万円と少ない西村氏は免責しても、1000万円以上の松野、高木両氏は許さない雰囲気だ。世耕氏については会計責任者と関係が深く、裏金づくりに関与していると特捜部はみている。任意聴取を受けた参院側の秘書は、みな世耕氏について聴かれている」

一方、同じく「5人衆」に数えられる萩生田氏には「子分格の池田氏から『キックバックのキックバック』を受けていたとの疑惑も浮上している」(同)という。多額のキックバックを受けていた大野、谷川、池田氏らへの捜査も同様で、それぞれの議員秘書は指示の有無や使途、資金をどこに入れていたかなどを聴かれ、「証拠になり得るあらゆるもの」を提出させられたというのである。

「ある秘書は、事務所で保管していた現金や預金通帳の写真データを送るよう求められた。議員の金銭消費を裏付ける行動記録をリスト化して、提出するよう求められた秘書もいた」(同)

とはいえ、永田町では政治資金規正法における指示命令系統の立証は以前から難しいといわれ続けている。その上、特捜部の実質的な捜査期間は1月下旬の通常国会開会までと短いため、「事務総長経験者まで立件できるかは五分五分」とみる向きも少なくないのだ。

先の党関係者によると、自民党は党の顧問弁護士に検事出身の弁護士らを加えた総勢10人程度のチームを編成。安倍、二階両派に弁護士を派遣する一方、立件される恐れのある議員には個別に弁護士を就け、特捜部の事情聴取に対する助言を行っているという。

「また、安倍派はキックバックは長年の慣習で事務総長に明確な犯意はない、死去した元派閥会長の細田博之前衆院議長がすべて取り仕切っていたので詳細は分からないという話を吹聴している。キックバックを受けた議員らは『使途報告の義務がない政策活動費なので、政治資金収支報告書に記載しなくていい』との派閥の指示に従っただけと言うようアドバイスされているのです」(自民党関係者)

5人衆立件で安倍派が瓦解

要は、検察の追及を受け流し地盤沈下を抑えたい党と、先ごろ死去した元派閥会長に罪をなすりつけてでも逃げ延びたい安倍派議員らの抵抗が続いているのだが、仮に同派5人衆が立件されれば全員が議員辞職に追い込まれるのは確実だ。幹部を一斉に失った安倍派は解体へ向かい、派閥議員らは散り散りになっていく。

「ただその際、同派の塩谷立座長や下村博文元事務総長には誰もついて行かないだろう。若手のホープである福田達夫元党総務会長にしても、『政治とカネ』問題と無縁ではない。清和会を創設した福田赳夫元首相の支援者が、プリンスホテルと森ビルの創業者一族だったのは有名な話だからだ。そのため、中堅、若手の多くは高市氏や小泉進次郎元環境相の下でグループを作り、生き残りを図ろうとするのではないか」(安倍派中堅議員)

恐ろしい話だが、これが昨今、永田町で噂されている安倍派の末路なのだ。

もっとも、岸田首相も自身の裏金疑惑を闇に葬る見通しがついたとはいえ、安倍派の崩壊を〝対岸の火事〟と眺めている場合ではない。今回の事件で岸田政権が受けたダメージは深刻で、毎日新聞の12月の世論調査では内閣支持率が16%にまで下落したからだ。

政府関係者によると、首相は周囲に「一つ一つ実績を積み上げていけば結果はついてくる」と話しているものの、通常国会では「政治改革」が最大のテーマとなることは必至。そのため、党に政治改革実行本部を設置し、政治資金規正法改正案や党改革案をまとめさせる意向を見せているという。

永田町関係者は「政治資金収支の透明化や、違反時の厳罰化は最低ライン。企業・団体によるパーティー券の購入や献金の禁止にまで踏み込むことができたら、国民評価も高まるのでは」と指摘するが、首相が政権浮揚策として考えているものはこれだけではないのだ。

「その二の矢が訪米の前倒しだ。現在、岸田首相は24年4月に国賓待遇で訪米する方針だが、これを早められないかバイデン政権に打診しているという。仮に2月後半にでも行くことができれば、経団連に要請していた2年連続の大幅賃上げの発表時期と重なる公算も高い。政治改革と訪米、賃上げで求心力を取り戻し、所得税と住民税の減税が行われる6月に衆院を解散、延命しようと考えているのです」(政治部デスク)

だが、こうした首相の思惑とは裏腹に、〝神風〟でも吹かない限り来春以降も岸田政権が続くと考えている者はごく少数だ。多くの議員は、3月の予算成立後に求心力の低下で内閣総辞職を余儀なくされると読んでいるからだ。

「すでに後継には茂木敏充党幹事長や石破茂元幹事長のほか、高市氏や上川陽子外相らの名前が取り沙汰されている。また、産経新聞が行った世論調査では、小泉元環境相や河野デジタル相の名前も挙がっているんです」(同)

岸田政権の命運はまさに風前の灯だが、年明け政界が検察の〝狩り場〟となることは間違いないのである。

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