会心予想のエリザベス女王杯の、わずか一週間後のマイルCSは、手も足も出ない予想をしてしまった。〝今秋で荒れるとしたらココか?〟とも多少は思ったが、ルメール大将シュネルマイスター、川田セリフォスのどちらも〝飛ぶ〟とはなあ…。2着のモレイラのソウルラッシュは3番人気だから、別に驚かない。驚いたのは何と1着の藤岡康ナミュール。
先週の文中で「伏兵には富士S組が挙げられるが、今年はレベルが高くなさそう。勝ったナミュールの鞍上ムーアは、先週〝エリ女〟のジェラルディーナ他ほとんどイイとこなし。モレイラからの乗り替わりも?」と書いた。
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そして当日、ムーアが午前中に落馬負傷し、急遽鞍上は藤岡康にスイッチ。これでますます要らない、という確信めいた気持ちになった。〝牝馬の鉄〟としては、紅一点の場合は食指が動くものだが、今回はまったくソノ気がなかった。5番人気でも人気になりすぎだぜ、と内心せせら笑っていたのだが、レースを見て凍りついた。大外からもの凄い脚で、並み居る(ナミュール)牡馬たちをゴボウ抜きのナミュール! とベタな駄ジャレでごまかすしかないなあ。
直前の代打の藤岡康は、自身14年ぶりのGⅠ制覇とは。馬券を離れて「おめでとう!」と素直に言おう。もし、あのままムーアが乗っていたらどうなったのだろう、と思ったりして。ルメール大将のシュネル、川田セリフォスは各々7着、8着と、掲示板にすら入れず、クツワを並べての無念であった。〝荒れた〟と書いたが、5、3、7番人気の決着だから、2桁人気馬が突っ込んで来たわけではなく、1、2番人気が来なかっただけ、とも言えそうだ。
そのルメール大将と川田のリーディング争いだが、この数週間で随分と差が付いたなあ。無双状態が続く大将が12勝も離している。残り1カ月と少々で、もはや逃げ切り濃厚。まあ、昨年は5位だっただけに、今年は期するものがあるのだろう。
“映画連想馬券”の本命はリバティアイランド
当然、今週のジャパンCはこのルメール騎乗イクイノックス、川田騎乗リバティアイランドで〝二人&二頭の世界〟を演出するはずだ。ただ、2頭とも1枠に入ったのは、内枠断然有利なレースとはいえ、逆にアヤが付きそうで、少し心配。まあ杞憂に終わるかな。あとは〝第三の馬〟は何? というだけの予想か。本来なら3番手が妥当のドウデュースは、武豊が負傷の治りが遅く、前走7着の戸崎が継続騎乗となったが、押さえまでが精いっぱい。横山和タイトルホルダーは有力馬に映るが、吉田豊パンサラッサと逃げ争いの兼ね合いが問題で、共倒れの危険性大。そのパンサラッサも含め6歳以上はここ10年ほとんど来ていない。
外国馬唯一参戦のヴェロン騎乗イレジンも、ムーアからドイルに乗り替わる昨年の覇者ヴェラアズールも、どうかな? この外国人騎手に藤田菜七子も参戦で、JC史上初の女性騎手3人騎乗となった。盛り上がるけど、馬券的にはスルーかな。6歳馬の中ではGⅠなら時々来たりする和田竜ディープボンドを唯一選ぶ。相手の中心は4歳勢、ビュイック騎乗スターズオンアース、モレイラ継続騎乗ダノンベルーガ。あとはほぼ〝参加賞〟か(失礼)。
さて〝映画連想馬券〟だが、リバティアイランドから、昨年夏に公開された香港・日本合作の『ブルーアイランド 憂鬱の島』(22年)を。20世紀後半の文化大革命から天安門事件の時空へと誘うドキュメンタリー・ドラマの異色作で、若き日に中国の国家権力に抗った実在の人物が回想したり、演じたりもする。〝一国二制度〟が、いとも簡単に踏みにじられた現在の香港において、中国人ではなく香港人としてのアイデンティティーを模索する映画でもあった。
返還前に競馬目当てに何度か行った彼の地だが、今やあの自由さや、街の光景は見る影もないようだ。若き日に体制を嫌い、泳いで香港に逃れ、今も香港湾を晴雨不問で泳ぎ続ける70代男性の孤高の姿が鮮烈であった。たまにはこういう硬派作も悪くない。
買い目は、〝2強縛り〟でいいんじゃな~い? まず①②縛りの3連複で⑤⑩は押さえ、⑭⑰を本線に。①から②⑤⑩⑭⑰へ、②から同じく①⑤⑩⑭⑰へ馬連のみ。リバティ頭固定の3連単も考えたが、慣れないことは止めた。リバティの単だけ記念に買う。トリガミもありそう? それでも〝世紀の対決〟の目撃者になれるだけで幸せだ。
秋本鉄次
映画評論家。〝飲む・打つ・観る〟〝映画は女優で観る〟をモットーに、娯楽映画、中でも金髪女優の評論にかけては業界随一。著書に『パツキン一筋50年 パツキンとカラダを目当てに映画を見続けた男』(キネマ旬報社)など。
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