『ジャニーズ帝国60年の興亡鹿砦社編集部編』鹿砦社 /1980円
松岡利康(まつおか・としやす)
1951年熊本市生まれ。同志社大学文学部卒業。10年間のサラリーマン生活を経て出版界に入り、芸能界の暴露本を手掛ける鹿砦社の代表。『タブーなき原発事故調書』『塀の中のジャンヌ・ダルク』などでも、社会に波紋を投げかけ続けている。
――まず、ジャニーズとの関わりを教えてください。
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松岡 1995年に『SMAP大研究』というファン向けの本を出版したところ、ジャニーズ事務所やSMAPメンバーからパブリシティー権の侵害(裁判では棄却)などで出版差し止めの訴えを起こされました。その後もタレントの出身地などを詳細に記した『ジャニーズおっかけマップ』(96〜2014年まで発行)シリーズで2件訴えられ、計3件の裁判を闘いました(2件は最高裁まで)。その最中にも平本淳也氏の『ジャニーズのすべて』(3部作)や、豊川誕氏の『ひとりぼっちの旅立ち』といった暴露本も数十冊出しています。
――そうした一連の鹿砦社vsジャニーズ紛争を当然、マスコミは知っていたわけですよね。
松岡 我々は兵庫県西宮市にある一地方出版社にすぎませんが、天下のジャニーズが訴えたわけですから、99年の週刊文春の連載以前も、ジャニーズべったりの芸能記者や大手マスコミは知り得ていたはずです。また04年の文春勝訴後も、記者会見で話題になった東山紀之新社長のセクハラ・パワハラに触れた『SMAPへ』を出版しました。
唯一無二の1冊に
――それでもメディアは〝沈黙〟をし続けたと。
松岡 ようやくジャニーズ帝国が崩壊し、NHKや朝日新聞などはここぞとばかりにジャニー喜多川氏や事務所を叩いていますが、我々に言わせれば笑止千万。4時間の会見をテレビで見ましたが、途中から気分が悪くなりました。明らかに上から目線のメディアスクラムが感じられました。なぜ、喜多川氏と姉のメリー氏の存命中に追及出来なかったのかということです。実はBBCは3年前から私たちにアプローチし、喜多川氏の犯罪を告発しようとしていました。今回はその外圧にジャニーズも日本のメディアも屈したわけですが、余りにも遅すぎました。またメディアだけでなく、ジャニーズ帝国の片棒を担いだ広告出広企業にも大いに責任はあると思います。
――ジャニーズの60年が1年ごとにくくられ、資料としても参考になります。
松岡 第1部は文春を含めたジャニーズとの裁判闘争や国会質問など資料性を重視し、第2部はタレントの活動をまとめています。喜多川氏はメディアに登場せず、「ジャニーズ史」そのものも事務所としては刊行していませんから、本書は唯一無二の1冊だと自負していますし、28年に及ぶ鹿砦社vsジャニーズの集大成にもなりました。そして、この11月には死者まで出し、ある意味ジャニーズより悪辣なタカラヅカのイジメ裁判本も復刻出版します。今後もご期待ください。
(聞き手/程原ケン)
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