「あれは、誰だい?」
秋季キャンプ2日目の11月3日、視察に訪れた王貞治球団会長が、フリー打撃で柵越えを連発させる背番号「166」について、尋ねた。
近くにいた球団スタッフ、コーチが育成1年目の外野手、重松凱人のことを説明する。王会長は重松に熱視線を送りながら、「スイングスピードも速いし、力があるよね」と称賛し、グラウンドから引き上げる際にも声を掛けていた。
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「スマホにインストールされている試合中の重松もチェックしていました」(現地記者)
王会長が、わざわざグラウンドまで下りてきた理由は、若手野手の成長速度に不満を抱いているからにほかならない。いみじくも、王会長はこう語っていた。
「今、ウチにはゲームの局面を1発で変えられるような選手が少ない。何とかそんな選手が出てくれないか」
1発のある長距離タイプが育っていないのだ。その心配は、来季から指揮を執る小久保裕紀監督(52)にも伝わっていた。
24歳以下の選手の活躍が…
同日、小久保監督は自ら打撃投手役を買って出て、若手の渡邉陸に159球を投げ込んでいる。
「1発を秘めた若手に、1日も早く一軍の戦力になってほしいという一心で買って出た打撃投手役です」(同)
ソフトバンクは「育成」のイメージが強かった。今年のドラフト会議でも支配下で7人、育成でも8人を指名していた。選手を育てていく方針は変わらないが、昨今頭角を現した若手は、1、2番タイプのリードオフマンばかりだ。
「最大のショックは、11月のアジアチャンピオンシップを戦う新生侍ジャパンにソフトバンクの選手が1人も選ばれなかったことです。同大会は『24歳以下、入団3年目まで』などの出場資格の条件があります。1人も選ばれなかったということは、24歳以下が他球団と比べ、見劣りしたとも判断できます」(関係者)
また、3年連続で優勝、日本一を逃した。V奪還は至上命令であり、今オフは国内FA市場、外国人選手、トレードも積極的に行う予定だ。そうなれば、来季は若手に与えられるチャンスも少なくなる。
小久保監督は、育成と勝利の両方を課せられた。両方を求めて巨人は失敗したが、ソフトバンクも、その二の舞となるのか。
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