監督・脚本/庄司輝秋
出演/アフロ(MOROHA)、呉城久美、黒崎煌代、津田寛治、松金よね子
配給/ロングライド/シグロ
心温まる1本に出会いました。夏ごろから「良い作品があるよ〜」と、情報が早い映画業界のライター仲間たちからススメられていました。まず、作品のタイトルが気になった。だって『さよなら ほやマン』ですよ!? なんか可愛い〜!
冒頭からとっても良い空気感。根本的なところはとても悲しく、みんなの記憶に深く根付いてる出来事であるから、心にダイブするように入り込みました。両親が震災からいまだ行方不明で、借金を抱えてしまった兄弟が懸命に再生する姿が描かれています。漁師として生計を立てようとする兄アキラと弟シゲル。しかしシゲルは海が怖い…。
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これだけ聞くと悲しい雰囲気もしますが、とてもコミカルに描かれていて、なんとか前に進もうともがくアキラとシゲルの姿が「生命」という強くて生々しいパワーに溢れています。
ある日、謎の女性がこの島を訪れ、強引に「家を売ってくれ」と言い出します。結局、その日は泊めてあげることにしたのですが、謎の女性は2人に対し、お金を差し出します。不思議に思いながらもお金に目がくらんでしまったアキラとシゲル。ここから3人の面白同居生活がスタートするのですが、なんと、強引な謎の女性が兄弟が読んでいたお気に入りの漫画の作家だと聞いてさらに驚き!
プロモーションで“人助け”
おかしな出会いであってもこの世はすべて「人」です。人に頼り、人に手を差し伸べ、そして共に生きる。今や日本は、コンクリートジャングルの冷たい環境で仕事に追われる日々。誰が隣に住んでるのかも分からない。いや、知りたくもない世の中です。
劇中のこの小さな島に流れる優しい空気、そしてアキラが〝ほやマン〟を通じて成長するところが、なんだか懐かしくて、とっても優しくてピュアで好き。
主人公のアキラを演じているのはMOROHAのアフロ。全力でこの役に挑んだのは見ればすぐに感じ取ることができます。
とにかく笑ったのは、この作品のプロモーションの一環として〝ほやマン〟が人助けするキャンペーンまでやってるところ。本当にアフロがほやマンに扮して依頼者の元へ。映画宣伝とは、まさにこのこと! アッパレです。
この作品、口コミでかなり広まると思います。だって、ほやマン…私も会いたいし、すでに脳裏にこびりついちゃってますから(笑)。
この秋、最初に出会った可愛い作品は、とっても愛に満ちていました。
LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。
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