帝国データバンクによると、外食産業で「勝ち組」とされてきた焼き肉店の倒産が、今年1〜8月までに16件と急増している。
「倒産件数は2022年の同時期に比べ約3倍。1〜8月の累計としては過去10年間で最多ペースに迫っています。しかも、倒産しているのは大半が小規模の焼き肉店。大手飲食会社の焼き肉業界参入が倒産の主な原因でしょう」(フードアナリスト)
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焼き肉店はロースターや換気設備などの初期投資が一般飲食店の1.3〜1.5倍掛かるうえ、牛肉は部位が多く、扱いも繊細さを求められるため「新規参入するのは難しい」(同)とみられてきた業種だった。
「ただ市場で肉を仕入れればいいという単純な話ではなく、そのルートを確保するのが大変なんです。しかも、牛肉は温度管理が重要で職人の技(知識)が必要とされる。それができたから、街の焼き肉店も長年営業を続けられてきたんです」(食肉アドバイザー)
コロナで変わった店内設備
ところが、コロナ禍前後からワタミや幸楽苑など大手飲食会社が焼き肉業界に参入。個人経営などの小規模焼き肉店は、価格競争やメニューの多様性に対応できず廃業に追い込まれるようになったという。
もっとも、コロナ禍で大手飲食会社の焼き肉店も苦戦すると予想されたが、〝1人焼き肉〟など新たな形態がヒットした。また、テーブルごとに吸気ダクトが備えられた店内設備も〝換気がいい=3密回避〟のイメージが定着。ホットペッパーグルメの調査では、20年8月の検索フリーワードで『焼き肉』が約6年ぶりに1位を獲得した。
「他の飲食店と比べ客単価が高いなどの特徴も追い風になって、コロナ禍で勝ち組になったんです」(同)
大手飲食会社参入の他、小規模焼き肉店が廃業に追い込まれる要因としては①餌代の急騰による牛肉(和牛)の値上げ②円安による輸入牛肉価格の高騰③人手不足による人件費や光熱費の上昇などが挙げられる。
もうもうと煙った店内で、ビールを飲みながら焼き肉を食べるのが好きなおじさん族には寂しい限りだ。
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