大相撲秋場所が終わって10日余り。10月4日から秋巡業が始まり、力士たちは次の九州場所に向けて稽古を再開したが、秋場所千秋楽の優勝決定戦で大関貴景勝(27)が格下の平幕、熱海富士(21)を立ち合いで左に変化してはたき込み、真っ向勝負を期待したファンの思いを裏切った波紋が続いている。
大関が優勝すれば次の場所は綱取り場所となり、空気が熱くなるのが普通。貴景勝も優勝インタビューで、
「(横綱という)夢に向かって、明日からがんばっていく」と誓ったが、その綱取りムードがさっぱり盛り上がらないのだ。
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「横綱審議委員会の山内昌之委員長は、優勝した事実は大きいとし、多くの条件や前提が満たされた場合、綱取りになると明言したが、肝心の協会首脳は完全に及び腰。勝てばいい、という土俵態度に加え11勝の優勝ですからね。貴景勝は今年の初場所も優勝していますが、そのときも12勝。横綱に昇進しても金星配給王になるのは必至で、その上、平気で変化されたら目も当てられない。協会首脳は横綱になったあとを心配しているんです」(協会関係者)
負けた熱海富士への声援多数
まるで優勝して株を下げた格好で、二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)も、「貴景勝は変化して失ったものは多い」とスポーツ新聞に書いたほどなのだ。
対照的に株を上げたのが優勝を逃した熱海富士。負けはしたが「よくやった」「あんころ餅みたいにかわいい」などという声がネットにあふれ、秋巡業でも人気ナンバーワン。出身地の静岡県熱海市の市役所には熱海富士へのメッセージコーナーも設けられ、市民からの声援がひっきりなしだ。
山内横審委員長も「(秋場所の)土俵を最後まで盛り上げた。飾らぬ人柄や、明るさと相まって新しいファンが誕生したのではないか」と賛辞を惜しまない。
もっとも、本人はあの変化負けが引っかかっているようで、秋場所後、母校の静岡・飛龍高に凱旋したときには、「本音を言えば、優勝して戻って来たかった」と漏らし、すでにそのうっ憤を晴らすように猛稽古を開始している。
2人の明暗は九州場所まで尾を引きそうだ。
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