監督/スティーヴン・フリアーズ
出演/サリー・ホーキンス、スティーヴ・クーガン、ハリー・ロイド、マーク・アディ
配給/カルチュア・パブリッシャーズ
2012年、500年以上にわたり行方不明だった英国王リチャード三世。その遺骨が英国中部レスターにある駐車場から発掘された実話を元にした本作。長年、いかなる研究者も明らかにできなかった遺骨の在りかを、アマチュア歴史家の主婦フィリッパ・ラングレーが主導して発見したという事実は、欧州を中心に世界中を騒がせたと思われます。
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本作を見た後にまず思ったのは、こんな大事件を自分はどうして知らなかったんだということ。ただ当時は、東日本大震災から1年後。日本はそれどころじゃなかったんですね。当然、英国では王室まで巻き込む大騒ぎになっていて、発掘調査とその後の遺伝子分析をめぐる顛末は、英国でテレビドキュメンタリー番組にまとめられて大ヒット。権威ある賞も取ったようです。
日本だったら織田信長の遺骨が出てきたぐらいのインパクトですよね。本能寺の変で自刃した信長の遺体がどこに行ったのかは謎ですから。本能寺があった場所は分かっていますから、もし遺骨が出てきたら、織田信成くんとDNA鑑定して、真偽が分かったりしないのかなぁ。
さて実際は、発掘から身元確定までに相当に複雑な考古学的・科学的過程があったようですが、本作ではうまく要点を絞り、かなりシンプルに仕上げています。おかげで分かりやすい。
国王の名誉まで回復したいと…
そんなドキュメンタリー要素に、主人公の主婦がリチャード三世の幻影を度々見るというファンタジー要素、女性差別や夫婦再生までがブレンドされて、歴史的発見に絡めたヒューマンドラマになっています。
英国本国では長らくシェークスピア劇の「冷酷非情で、背中にコブのある国王」というキャラ設定が、まるで史実のように浸透していたようです。フィリッパは遺骨発見だけでなく、国王の名誉まで回復したいと願います。確かに、度々現れる王の幻影は、彼女が「推し」たくなるのも納得のカッコよさです。ミソは、幻影に「あなたはどこに眠っているの?」と聞かないところですね。聞いてしまって「ここ掘れワンワン」になったら台無しですから。
さて、「リチャード三世」にはある種の郷愁があります。
1970年代後半、自分が大学に入った頃、東京・高田馬場に、ほんの短い期間あったディスコの名前だったんです。先輩に連れられて一度だけ行きましたが、当時のDJが「ここは日本一盛り上がっているぜェイ!!」などとブチ上げていました。何度も言いますが、高田馬場ですよ。
本作のおかげで、ディスコから国王の名前へと記憶が塗り替えられました。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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