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中国に隠れ債務1900兆円!? 不動産バブル崩壊で習近平政権に衝撃の事態

習近平
(画像)360b/Shutterstock

中国経済が抱える「時限爆弾」が爆発寸前だ。不動産バブルの崩壊を受けて、地方政府が抱える「隠れ債務」は約1900兆円にまで膨らみ、大手不動産企業の連鎖破綻から金融危機に発展する可能性が一段と強まっている。経済の低迷を受けて、若者の失業率は事実上5割近いとの指摘もあり、くすぶる不満の矛先が習近平政権に向かうのは避けられない。

中国各地には、建設途中で放置された高層マンションが立ち並び、一帯は「鬼城(ゴーストタウン)」と呼ばれている。中国ではマンション購入の際、開発前にローンを組んでいる例が多く、借金を抱えたままマンションも未完成という悲惨な状況の購入者が怒りを爆発させている。

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中国の不動産大手『恒大集団』が8月17日、アメリカで連邦破産法15条の適用を申請したのに続き、不動産最大手『碧桂園(カントリーガーデン)』も同月30日、2023年の上半期決算で過去最大となる約1兆円の損失を計上したと発表した。提出書類には「財務実績が悪化し続けた場合、デフォルト(債務不履行)が発生する可能性がある」と記載されている。

米格付け大手の『ムーディーズ』は、碧桂園の格付けを「Ca」に引き下げた。これは21段階の下から2番目で、デフォルトに近い状態を示すものだ。

「碧桂園は米経済誌『フォーチュン』の世界企業500社売上高番付にランクインするなど、急成長してきた中国企業の代表格で、中国における昨年の不動産販売額でもトップだった。市場からも『優等生』とみられていたが、不動産価格の下落を受けて業績が落ち込み、財務状況も悪化。8月に米ドル建て債券の利払いを延滞していた」(中国経済アナリスト)

若年層の失業率も過去最悪

大手企業の経営悪化が大きな問題となる一方で、地方政府といわれる省や市などが闇で抱える借金も深刻だ。中国では地方政府が投資会社を傘下に置き、不動産開発や道路、ダムなどインフラの整備を行ってきた。不動産が上り調子の頃はよかったが、バブルの崩壊で投資会社は一気に負債を抱えるようになった。

IFM(国際通貨基金)は投資会社の借金額を約1320兆円と推計し、英紙『フィナンシャル・タイムズ』は地方政府全体の借金額を約1880兆円と報じている。中国の22年のGDP(国内総生産)は約2420兆円なので、その8割近くに相当する巨額の借金が眠っていることになる。

「中国では居住目的だけでなく、投資目的でマンションを購入している個人や企業が多い。不動産価格が下がれば個人は消費を減らし、企業は投資を減らす。不良債権が増えると金融機関は融資を絞るので、景気が失速する恐れがある。財政難の地方政府は税収が減り、破綻状態となるだろう」(国内シンクタンクのエコノミスト)

こうした経済不振のあおりを受けているのが、中国の若者だ。若年層(16〜24歳)の失業率は今年6月に21.3%と過去最悪を記録したが、当局は7月以降の公表を取りやめている。

「高学歴化が進む中国だが、産業の発展が見合わず、大学は出たけれど就職できないという人材も増えている。また、企業のリストラも若者に集中している。北京大学の研究者が、家に引きこもっていたり、親のスネをかじったりしている若者も失業者として統計に入れた場合、失業率は実に46.5%に達した可能性があるとする試算を公表したが、すぐ当局に削除されてしまった。本当の数字が露呈して中国経済の実力を世界に知られたら、外資は逃げ出すだろう。若者の怒りもさらに大きくなるはずだ」(前出・アナリスト)

デフレ長期化で若者らが爆発

不動産バブルの崩壊や地方政府の隠れ債務の存在は、10年以上前から問題視されてきたが、習政権は効果的な手を打つことができず、現在の悲惨な状態を招いてしまった。若者の就職難の問題も予測されていたことだが、これにも抜本的な対策を打ち出すことができていない。

1990年代における日本のバブル崩壊では、多くの不動産関連企業が倒産し、同時に不良債権を抱えた金融機関も経営が悪化して、破綻や再編を余儀なくされた。経済はデフレに突入し、「失われた30年」ともいわれる長期低迷が続いた。

中国も不動産バブル崩壊から金融危機、さらにデフレの長期化と、日本の二の舞いになる可能性がある。

「習政権が最も恐れているのは、不平不満が高まった若者たちが暴発し、国内が混乱することだ」(前出・エコノミスト)

東京電力福島第一原発における処理水の海洋放出について、中国政府があれほどまでに反対し、日本への「嫌がらせ電話」や偽情報のたれ流しを黙認しているのも、若者たちの「ガス抜き」だと考えれば合点がいく。

「今後も中国は反日の姿勢を強めたり、台湾やフィリピンなど周辺国に強硬策を取ったり、国内経済の実状から目をそらさせようとするのではないか」(同)

世界ナンバー2の経済大国であることを誇ってきた中国が、急速に地盤沈下しようとしている。日本も身構えておく必要がある。

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