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『シロギス』愛媛県松山市/梅津寺産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

30年という歳月。働き盛りの若者が定年を迎える、あるいは生まれたばかりの赤ん坊が働き盛りの青年になる…こう考えると結構な歳月のように思います。ところが、自分自身を振り返ってみると、それほどの長さは感じられないと言いますか、むしろアッという間だったように感じます。これは、あまり成長がないからなのでしょうか。


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今から30年ほど前、ちまたにはまだバブル景気の雰囲気が色濃く残り、なんと言いますかイケイケな世の中だった頃、トレンディードラマというものが大いに流行っておりました。東京のお洒落な街に暮らし、最先端のファッションに身を包み、憧れの職業で働く。そして軸となるのは、なんとも歯がゆい恋愛ストーリー。そんな中で個人的によく憶えているのが〝東京ラブストーリー〟です。

当時、釣りばかりやっていて、あまりこういったドラマは見ていなかったのですが、たまたま友人宅で仲間(男のみ)と共に見たこのドラマにハマってしまい、毎週月曜21時は友人宅に集まって盛り上がったものでした。女性主人公の名ゼリフの瞬間の、ブラウン管に見入る男子高校生6名の異様な熱気は忘れられません。

今、この年になってみれば、そんなことを言われたら答えは一つ。〝時間でいくらなのか〟〝ゴムなしでもいけるのか〟をしっかり確認してから回答するのが大事ということは分かるのですが、当時高校生だったワタクシたちはただ無邪気に盛り上がるのみでした。そして、あと5年か10年もしたら、自分たちにもこんなラブストーリーが待っているのかと、漠然とした期待を抱いていたように思います。

ドラマロケ地でシロギス狙い

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日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

さて、今回はそんな東京ラブストーリー最終話の舞台となった、愛媛県松山市は梅津寺にて、投げ釣りでシロギスを狙ってみたいと思います。伊予鉄道郊外電車の梅津寺駅はホームのすぐ後ろが海岸となっており、駅で降りたらすぐ釣り場という、電車釣行にも有り難いポイントです。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

早速、海岸に下りて投げ竿に市販のシロギス仕掛けを結び、エサの日本ゴカイを付けたら沖に向けてフルキャスト。遠浅の地形ゆえ着水とほぼ同時に着底です。ゆっくりと仕掛けを引いてくると、ブルルッとアタリ。

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日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

巻き上げた仕掛けには幸先よく本命のシロギスが掛かっていましたが、小指ほどの大きさの、いわゆるピンギスと呼ばれるお子さまサイズです。「一投目からの本命は嬉しいけれどピンではなぁ」などと独りごちながらリリースをして続けますが、その後もポツポツとハリに掛かるのはいずれもがピンギスです。

そこで、ちょっと面倒ではありますが左斜め先に見えている防波堤に、道具を担いでよっこいよっこいと移動。防波堤から沖に向けて投げてみると、今度はピンギスに変わってホンベラやササノハベラといったベラ類のオンパレードです。どこに投げても何かしらのアタリが多いのは飽きずに楽しいものですが、今回はキス狙いですから、やはりそれなりのサイズのシロギスを釣りたいところです。

変わらぬも人生悔いはおまへん

どこかによいポイントはないものか…と海を眺めるうちに、ふと、防波堤内側の溜まりに目が止まりました。夏場はこういう溜まりも侮れないときがあります。静かに釣るためにオモリを軽い物に替えて、フワッとキャスト。仕掛けを動かさずに置き竿で待っていると、キューンと竿先が絞り込まれました。小気味よい手応えで釣れたのは17センチほどのシロギスです。これでポイント、攻め方を絞れたこともあり、ここからは同じくらいの大きさのシロギスをポツポツと追加。晩酌の肴分くらいは確保できたことから、竿を畳んで駅へと向かいます。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

駅のホームは、現在でも〝東京ラブストーリー〟のロケ地として訪れる方がいるようで、柵にはドラマ同様にたくさんのハンカチが結ばれております。ワタクシも頭に被っていた黒タオルを結んで行こうかと思いましたが、ウロコやヌルの付いた魚臭いタオルは、なにかラブストーリーを汚してしまうような気がして、結ぶのはやめて大人しく電車に乗ることにしました。

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日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

さて、シロギスといえば定番の天ぷらです。揚げたての天ぷらはサクッと香ばしく、暑い中で竿を振っていたこともあり、冷えたビールがこれまた旨い。30年前、いつかはこのお兄さんたちのように、華やかなラブストーリーが待っているのかと思ううちに何もなくオッサンになりました。でも、人生いろいろ、これもまた悔いなし(負け惜しみ)と、さらにビールを呷るうちに眠りについたのでありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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