8月10日、幕下に低迷していた元幕内の明瀬山(38)が引退し、年寄『井筒』を襲名した。今後は部屋で後進の指導に当たるようで、笑顔で今後への意欲を示していた。
明瀬山とは対照的に自分の先行きを思い、複雑な表情を浮かべる力士も少なくない。というのも、ここ数年、引退後も大相撲界に親方として残留するには必須の年寄株の極端な不足が続いているからだ。明瀬山が引退する前の時点で、空いていた年寄株は2つ。井筒と『音羽山』だったが、その貴重な1つの井筒を明瀬山が襲名したため、残っているのは音羽山だけになってしまった。
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「その井筒も、持ち主は先代井筒親方の未亡人で、将来的には娘婿の十両・志摩ノ海が継承することになっている。明瀬山は一時的に借り賃を払って借りただけで、いずれ返却しなくてはいけない。また、かつて大関貴ノ浪が名乗っていた音羽山も、二所ノ関一門のもので、すでに阿武咲が取得済みという情報があり、実際には空き株はゼロの状態です」(大相撲担当記者)
目処が立っていない力士がずらり…
引退年齢に差し掛かっている力士たちの悩みは、深刻そのもの。この1〜2年、三役経験のある松鳳山や豊ノ島、元幕内の豊山らが相次いで大相撲界を離れたのも年寄株不足のせいとされる。物が足りないと、値段が高騰するのが経済の原理。手を出したくても出しようがなかったのだ。
「唯一、うまくこの難関をクリアしたのが6月に引退し、『間垣』を襲名した元幕内の石浦です。石浦は自分の元師匠だった先代間垣(元幕内竹葉山)が身を引く形で年寄株を取得しました」(相撲協会関係者)
現在、いつ引退してもいい年齢に達しながら、いまだ年寄株の目途が立っていないのは、38歳の玉鷲を筆頭に36歳の宝富士、33歳の高安、錦木、32歳の竜電、剣翔、31歳の正代、翔猿、宇良、琴恵光らがいる。
「玉鷲は、それ以前に日本への帰化が必要だし、大関経験のある高安、正代らは3年間だけ現役名で残れる特権はあるが、その後は不透明です」(同)
土俵裏では、力士たちの悲鳴が響いている。
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