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秋の解散も見送りか!? 岸田首相の最側近に“重大スキャンダル発覚”で募る危機感

岸田文雄
岸田文雄 (C)週刊実話Web

内閣支持率が下げ止まらない中、岸田文雄首相は9月中旬に内閣改造と自民党の役員人事を行う構えだ。最側近の交代説も浮上するなど、政権の「骨格」をどこまで代えるかが焦点となるが、首相が狙う秋の衆院解散には障害があまりに多く、展望は見通せない。

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「また下がったのか」

7月中旬に海外訪問した岸田文雄首相に同行せず、官邸の留守を任された木原誠二官房副長官は周囲にこぼした。

朝日新聞と共同通信が7月17日に報じた世論調査で、内閣支持率がそろって大幅に下落したのだ。朝日は37%で前月比5ポイント減、共同は34%で同じく6ポイント減だった。

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木原氏をはじめ、官邸の主要幹部が懸念するのは不支持率。朝日で50%、共同でも48%に達していた。

「首相はもともと国民的人気がなく、消極的支持が多かったから、何かあるとすぐに化けの皮がはがれ落ちる。この先は支持率を上げる要素がなかなかない。政権運営は厳しくなる」

官邸詰めの政府関係者はつぶやいた。

だが、通常国会が6月21日に閉会してからしばらくの間、政権内の危機感は薄かった。自民党内に「次は人事」とそわそわし始める議員もいる中、まったりとした雰囲気すら漂っていた。

「閣僚の皆さん、昨年はいろいろとあったので夏休みをしっかりと取り、その後の政策展開に備えてください」

岸田首相は6月27日、首相官邸で開かれた閣議前の閣僚懇談会で述べた。

これを聞いた閣僚の一人は「解散するなら10月中旬で、臨時国会冒頭のつもりでいるんだな」と受け止めたという。

どういうことか。今の内閣のまま夏休みを取るなら、人事は8月下旬以降になる。だが、9月上旬までは首相の外交日程が立て込んでおり、下旬には国連総会に出席するので、人事は9月中旬しかない。

この場合、新閣僚の準備が必要になるため、臨時国会は1カ月後の10月中旬に召集するスケジュールが持ち上がる。さらには、旧区割りでの実施となる衆院の長崎4区補欠選挙(10月22日投開票)を統合する必要があるので、召集直後の解散となるのだ。

人事がしっかりできれば…

ただ、この閣僚は「総理は解散しないほうに傾いている」とも感じたという。解散するなら、これまでの勢いがまだ残る秋口が有利なので、人事はお盆前になるが、首相がそうしないからだ。閣僚は「受けたダメージが思いのほか大きいからだろう」と話す。

確かに首相は先の通常国会で、一時は解散を視野に入れたが、長男・翔太郎氏の公邸忘年会写真の問題や、トラブルが相次いだマイナンバー問題、自民、公明両党間に生じた亀裂の表面化など、いくつもの逆風にさらされ、内閣支持率に急ブレーキがかかった。

結局、解散は見送られたが、その際に首相自身が解散判断について「状況を見て最終判断する」とほのめかしたことが、「解散権をもてあそんだ」との批判を招き、国民の「岸田離れ」に拍車を掛けた。

こうした状況が変わらないうえ、マイナンバー問題が尾を引くのは明らかで、一層のダメージも予想される。全国の自治体が対応に追われ、衆院選に人員を割くことが困難になりそうだという現状も、最近ようやく官邸に伝わってきた。

正確な納税額を把握するための「インボイス制度」導入も10月に控えるが、零細事業者や個人事業主からは不評で、政権にはかなりの逆風となる。このような状況下では「解散しようにもできない」(首相周辺)のが当然だ。

実際、首相自身も周囲に「ちょっと厳しい」と、解散できる状況でないとの認識を吐露しているようだ。

自民党岸田派(宏池会)幹部によると、こうした展開を見越してか首相は7月以降、「政権をどう立て直していくのか、政権の中核メンバーと意見を交わしてきた」という。

幹部によると「ほぼ共通認識を持ててきた」らしい。かいつまんで言えば「経済は好調なので政権は維持できる。人事さえしっかりできれば、来年秋の自民党総裁選は勝てる」ということである。

ポイントは米国だ。近く利上げが終わり、来年は好況が予想されるので、日本経済も底割れはしない。だから「課題に一つ一つ取り組み、着実に成果を挙げていく」(岸田首相)なら、政権は不安定化しない。そこで、しっかりした人事に注力していく。

それは、解散より総裁選をにらんだ人事をすることに他ならず、自ずと焦点は「ポスト岸田」への意欲を公言してはばからない自民党の茂木敏充幹事長と、国民的人気の高い河野太郎デジタル相の処遇になる。

「総裁選を考えれば、茂木氏を幹事長から外すべきだが、首相は迷っている。代えるなら、茂木氏の行き先は財務相くらいしかないが、首相は旧宏池会系の鈴木俊一財務相と宮沢洋一税調会長のラインを気に入っていて、代えたくない」(前出・岸田派幹部)

こうした中、一部で浮上するのは「あえて茂木氏を要職に就けない案」だという。これは衆院解散を総裁選以降にする案とセットになっており、国民に不人気の茂木氏では「選挙の顔」にならないので、「総裁選で勝ち目はない。そんな茂木氏を厚く遇する必要もない」(同)というわけだ。

後任幹事長に、茂木派内で進境著しい小渕優子元経済産業相を抜擢すれば、茂木氏のダメージはより大きくなる。

河野氏についても、続投させて引き続きマイナンバー問題に当たらせるか、事実上の更迭でダメージを与えるか、両案があるという。

茂木幹事長は〝続投〟を画策

一方、ここにきて岸田首相は、官邸の態勢をこのままにするか考え始めているという。松野博一官房長官と木原氏のことだ。

松野氏は前に出すぎず安定感はあるが、出身派閥が安倍派のため、首相と意思疎通に欠けるのは否めない。そこで、一部で浮上するのが岸田派の上川陽子元法相や、首相に近い遠藤利明総務会長の名前だ。

ただ、党内最大派閥の安倍派を引き付けておく必要があるため、松野氏を外したとしても、萩生田光一政調会長を続投も含めて党四役で処遇するか、西村康稔経産相を政調会長か総務会長に据える案が、首相周辺でささやかれているという。

問題は木原氏だ。岸田首相の最側近として信頼が厚く、政権の基本政策である「新しい資本主義」は木原氏が中心になってまとめた。

この木原氏が、週刊文春による「怪死事件」報道にあえいでいる。内容は木原氏の妻が、前夫の不審死に重大な関与をしているのではないかというものだ。しかも、警視庁が死後10年以上たった2018年に再捜査に着手したものの、1年足らずで突如、態勢が縮小されたという。

前夫の肉親は7月20日に緊急記者会見を行い、再捜査を求めることを強調したが、疑惑の内容が事実なら大変なスキャンダルになる。木原氏にとって最大の焦点は、「妻の関与」と「政治の圧力」の有無だろう。

自民党関係者が明かす。

「実は、この情報は再捜査着手とともに自民党執行部に伝わった。当時は二階俊博幹事長で、情報調査局長だった木原氏に『早く別れろ』と促したが、木原氏は別れなかった」

警視庁の再捜査が事実上ストップしたのは、この後のことで「圧力」の存在が疑われるゆえんだ。

「岸田首相は当然、この辺りの事情も知っていながら、木原氏を官房副長官に登用している」(同)

こうした事情から、党内には木原氏の続投を不安視する声が増しており、任命責任の観点からも、「首相はかばいきれなくなるのではないか」とみる向きは少なくないという。

交代の場合は、同じく岸田派で側近の一人である村井英樹首相補佐官が、昇格するとの見方も出ている。

ただ、さまざまな問題が露呈して政権への向かい風が強まる中、首相がどこまで主導して人事ができるのか、疑問視する声も出てきている。自らの人事ができなければ、その後の衆院解散の時期を含めて、政局の主導権が不確かなものになりかねない。

人事は「首相の大権」とはいえ、政権基盤が強固であることが前提だ。しかし、内閣支持率は下げ止まらず、いくら首相が「実績を積み上げていく」と叫んだところで、永田町の多くが解散のタイミングを逃したと受け止めていれば、求心力は落ちていく。

首相と距離を置く菅義偉前首相に近い、自民党無派閥の中堅議員が話す。

「首相が『伝家の宝刀』を持っていても、抜けないのなら政権運営は厳しくなる。満足のいく人事などできない」

実際、茂木氏は麻生太郎副総裁を後ろ盾にして、幹事長続投を画策。6月27日に首相と3人で会食し、続投を強く求めたという。7月中旬には側近議員らを引き連れて、南米のペルーやブラジル、東欧のポーランドを歴訪し、存在感をアピールした。

〝政敵〟の二階氏を取り込む

安倍派の実力者の一人である世耕弘成党参院幹事長は、松野氏後任の官房長官への意欲を隠さない。6月下旬には静岡県三島市のリゾートホテルで、約40人の参院の安倍派議員でつくるグループ「清風会」の研修会を泊まりがけで開催し、「数の力」と結束力を誇示してみせた。

菅氏も7月4日から7日までインドを訪問し、モディ首相と会談した。インドの歓迎ぶりが「首脳級の扱い」(前出・中堅議員)だっただけでなく、約100人もの経済人が同行し、菅氏の健在ぶりを見せつけた。

首相にすれば、公明党の動きにも神経をとがらせなければならない。公明党は、今秋の解散を念頭に6月下旬以降、さいたま市と名古屋市で決起集会をそれぞれ開催。9月下旬には衆院選の準備に入るため、全国方面長会議の開催も予定しているという。

これについて前出の自民党関係者は「決起集会も方面長会議も解散への備えではあるが、その裏には解散権をもてあそんだ首相への強い不信感がある。学会の組織力を見せつけて、政権運営で公明党にもっと配慮するよう首相をけん制している」と話す。

こうした状況の中、首相は欧州や中東など一連の外交に出発する前の7月4日夜、東京・赤坂の日本料理店『赤坂梢』で、元宿仁自民党本部事務総長と2時間以上にわたり会食した。

元宿氏は自民党の「金庫番」であるとともに、選挙に精通した大ベテランの党幹部で、首相の信頼が厚い。3月にも同じ場所で会食している。

事情を知る党関係者によると、首相は6月28日に東京・紀尾井町の日本料理店で、二階氏と会食したことを報告した。

昨年10月に首相は、当時「政敵」関係にあった二階氏と、仲介役の元宿氏を交えて会食し、関係修復の糸口とした。

今回も元宿氏が仲介の労を取り、8カ月ぶりに会食が実現した。首相は元宿氏に「二階さんからは『岸田政権の真ん中で頑張りたい』と言っていただきました」と伝えたという。

非主流派で最も関係が遠かった二階派を取り込み、政権基盤の強化に余念のない首相は、果たして狙い通りに政権を運営していけるのだろうか。来たるべき人事が鍵を握っているのは間違いない。

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