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コロナ感染再拡大で“第9波の可能性”~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

つい数カ月前まで、コロナの新規感染者数を毎日伝えていた報道番組や情報番組が、感染状況を伝えることがほとんどなくなった。

直接の原因は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴って、全国の感染者数の把握をやめたから。それでも定点調査の結果は毎週発表されていたが、その結果もほとんど報じられなくなっているのだ。それどころか、最近「○○アナウンサーは、体調不良のためお休みをします」というコメントをよく聞かないだろうか。その体調不良のなかには、相当数のコロナ感染が含まれているとみられる。


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実は、政府が毎日の感染者数の報告をやめた後、新型コロナワクチンを製造するモデルナ社が、毎日の感染者数を推計し、公表している。もちろん、そのデータがニュース番組で紹介されることはほとんどない。

私は政府と政府に忖度する大手メディアが、コロナ感染をなかったことにしようと目論んでいるのではないかと考えている。しかし、コロナ感染はいまかなり深刻な状況になっている。モデルナ社の発表した6月19日の全国感染者数は、4万1507人に達している。ちなみに感染第7波の入り口となった前年同日の感染者数は1万1652人だった。前年比で3倍以上の新規感染者が日本で発生しているのだ。

さらに、21年8月27日に21都道府県に対して緊急事態宣言が出された日の感染者数は、2万4305人だった。つまり現時点の感染者数は、すでに緊急事態宣言レベルを大幅に超えていることになる。

経済を回すためには隠したい…

政府が新型コロナの再拡大を隠そうとする最大の理由は、経済だろう。3年にわたるコロナ禍で大きく経営を傷つけた観光、旅客輸送、飲食、エンターテインメントなどの産業は、いまようやく日常を取り戻しつつある。ここで行動制限をしたり、コロナに対する不安を高めたりすれば、傷を癒やすチャンスを逃がしてしまう。ただ、だからと言って、このまま感染拡大を放置すれば、取り返しのつかないことになってしまう可能性もあるのだ。

私は、いまからでもやれることはあると思う。第一は、検査体制の拡充だ。5類移行によって無料のPCR検査は原則廃止されている。しかし、これだけ感染者数が増えてきたのだから、一部でもよいので無料検査の体制を復活させるべきだろう。

第二は、政府による毎日の感染者数公表の復活だ。モデルナ社ができているのだから、政府が同様の発表をできないはずがない。第三は、感染者数の動向を踏まえたうえで、適切な診療体制と治療薬の確保をすること。さらに第四は、ワクチン接種を促進することだ。高齢者や基礎疾患のある人に対するワクチン接種は5月から始まっているが、6回目の接種を受けた人は約1000万人と、接種率は低迷している。コロナ感染に対して、いま日本人は丸腰に近い状況になっているのだ。このままだと、過去最大規模の感染第9波になる可能性があるとの指摘をする医師もいるほどだ。

経済を回すために日常を取り戻すという方針が誤りだとは思わない。しかし、その前提として、新型コロナの感染状況を毎日正確に把握し、感染状況が深刻化した場合には、いつでも強力な感染症対策をとれるように万全の準備をしておくことが不可欠だ。リスクに目をつぶるのではなく、リスクときちんと向き合うことが必要なのだ。

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