好調阪神の象徴的存在でもあった大竹耕太郎が、6月10日、初黒星を喫した。これは、ただの1敗ではない。これで阪神は「無敗の大竹」「土曜日」「3連敗なし」、好調を表してきたすべてのキーワードを失ってしまったのだ…。
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「大竹は同日の試合前まで6勝無敗、防御率は0点台でした。今季の阪神は土曜日は負けナシ、かつ12球団で唯一、3連敗のないチームでした」(在阪記者)
「超えられない壁」もあった。「貯金20」の壁だ。
「近年、セ・リーグの優勝チームは20以上の貯金を稼いでいました。2022年に優勝したヤクルトは80勝59敗4分け(貯金21)、21年もヤクルトは73勝52敗18分け(同21)、20年の巨人は67勝45敗8分け(同22)を記録しています。同年の福岡ソフトバンクに至っては73勝42敗5分けで貯金31です」(スポーツライター・飯山満氏)
つまり、貯金20が優勝チームの必須条件であり、その数値に届かなければ、2位以下のチームも「そのうち追いつく」と、追撃をやめないというわけだ。
阪神の今季の貯金最多は「18」。つまり、交流戦突入後につまずいてしまったわけだ。
そして大竹の敗戦について、こんな指摘も聞かれた。
「岡田彰布監督らしくないというか…。交代のタイミングを見誤ったようで、続投させなければならない理由があったようなのです」(前出・記者)
10日の日本ハム戦、先発した大竹が苦しみながらも7回を投げ終えた時点で、投球数は99。今季ここまでの最多が104球だから、誰もがその時点で交代だと思っていた。しかし、岡田監督は続投を選択した。
試合後、この続投について、こう語っている。
「勝ち越してたら(大竹を)代えられたけど。同点じゃやっぱりなあ」
先発陣の不振で夏場苦戦する!?
8回表の阪神の攻撃が終わった時点でのスコアは、3対3。5月の月間MVPにも選ばれた大竹を勝たせてやりたかったのだろう。しかし続投は、「単なる温情ではない」との指摘も多く聞かれた。
「救援陣に不安があり、継投策に持ち込むことができなかったんです。クローザーの湯浅京己が同8日の楽天戦で救援に失敗しサヨナラ負け。中継ぎの浜地真澄もイマイチ。延長戦突入も考え、大竹に長く投げてもらおうとしたようです」(同)
その続投が裏目に出たわけだが、翌11日の同カードでも若い才木浩人を7回まで引っ張っている。最後は湯浅がなんとか抑えてゲームセットとはなったが、「継投策」で勝つ岡田野球ではなかった。
「先発投手陣にも不安要素があります。今季、ブレークした村上頌樹に勢いがなくなり、昨季の最多勝投手、青柳晃洋がファーム戦で打ち込まれています。西勇輝の調子も上がってきません。才木を長く投げさせたのは、自信を持たせて、この次も長いイニングを投げてもらうためです」(球界関係者)
先発陣の不振は、夏場の連戦で大きなハンディとなるかもしれない。
「交流戦での阪神の失速は意外でした。パ・リーグ首位のロッテにこそ勝ち越したものの西武、楽天、日本ハムの下位チームにはすべて負け越し。岡田監督は交流戦で最初に通算100勝に到達した指揮官であり、交流戦突入前は8連勝中だったから期待したのですが…」(前出・飯山氏)
ここまで投手陣を支えてきた村上、大竹の勢いが止まったからだが、「情報不足」も一因だろう。
「今季、日本ハムの主催でビジターゲームとなるセのヤクルト、広島は新球場・エスコンフィールドのマウンドを警戒していました。『マウンドクレイ』が使用された球場なので」(同)
マウンドクレイとは、簡単に説明すると、野球場のマウンド専門の粘土のこと。細かいチップ状になっていて、専用の液体を掛けてならすのだ。
勝率5割強のために立て直す
メジャーリーグの球場ではすでに浸透しているが、スパイクを通じて投手に伝わってくる感触は軟らかい。しかし、ちょっと掘ると硬く、「スパイクの刃が地面にしっかり刺さっていないような…」「滑る」といった感想を持つ投手も多いそうだ。
「大竹は制球力の高い投手です。なのに、エスコンフィールドでは、捕手が構えたのとは逆の方向に行くなど苦しんでいました」(前出・記者)
セの他チームの投手はブルペンを硬く整備してもらい、日本ハム戦に備えたそうだ。
それに対し、甲子園球場のマウンドはどこまで掘っても軟らかさは均一。その〝職人魂〟のマウンドで投げてきた阪神投手陣は、かなり戸惑ったという。
「岡田監督は監督室で毎日のようにiPadでパ・リーグの試合を見て、イメージを膨らませていました。様相の異なるパの球場に気をつけるよう、選手たちに伝えていたんですが…」(前出・球界関係者)
独走態勢がほぼ固まりつつある状況で、虎ナインも甘く見ていたのでは…。早く立て直さなければ、セ・リーグは混戦となる。
岡田監督は「勝率5割はアカン」と言って交流戦に臨んだ。勝率5割強を達成するには、残り6戦を4勝2敗で乗り切らなければならない(12日時点)。しかも、交流戦明けは、いきなり2位DeNAと敵地で〝首位決戦〟となる。
「日本球界に慣れてきたT・バウアーとの対戦も避けられません」(同)
阪神はこの先、ツラい夏を迎えることになりそうだ。
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