6月3日に行われたセ・パ交流戦第2節の千葉ロッテ戦を白星スタートで飾った阪神タイガース。前節こそ負け越したが、これで、3連敗を喫していないチームは岡田阪神だけになった。翌日も勝って、貯金は「18」(6月4日時点)。だが、この「独走」はあまりに想定外だったのか、さまざまな波紋を呼んでいるのだ――。
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そして、勝利インタビュー中に出た岡田彰布監督のコメントが意味深だった。
「今日、負けてたらズルズルいく負けやったやろうな、余計な。まあ、うーん。すっきり勝てればな、9回できっちり勝てればええけど、そんないつもずっといい流れではいかんしな」
この「ズルズル」発言が出たのは、これが初めてではない。埼玉西武戦を落とした同1日の試合後も口にしていたのだ。
「ズルズルと連敗のドロ沼にはまりそうなところで踏みとどまったのだから、やはり『今年の阪神は強い』のでしょう。チームが悪い方向に傾いていると察することのできる監督はたくさんいます。でも、その流れを止めるにはどうすればいいのか、的確な指示を出せる監督は多くありません」(ベテラン記者)
もっとも、こんな情報も聞かれた。
チームが好調で阪神フロントや関係者は上機嫌だが、「独走」の言葉にはあまりいい顔をしない。なぜなら、「2008年の黒歴史」があるからだ。
08年は前半戦で完全な独走状態となり、球宴前にマジックナンバーも点灯。だが夏場の終わりに失速し、宿敵・巨人に逆転優勝を許した。
人材育成が間に合わない!?
最大13ゲーム差を逆転された屈辱は吹っ切れていないのだろう。挨拶代わりにチームの好調さを伝えると、「これからが…」、「まだ始まったばかりで」と〝謙遜〟してくるという。
しかし、岡田監督も慎重な采配を続けているのは間違いなさそうだ。
最初の「ズルズル発言」だが、岡田監督は打線のつながりも口にしていた。ヤリ玉に挙げられたのは3番のS・ノイジーで6月1日の西武戦は4打席すべてが走者を置いての局面だった。
「特に問題視されたのは、2点を追う8回。先頭の2番・中野拓夢が四球で出塁したのに、ノイジーは簡単に初球に手を出し凡フライ。四球で走者をため、ジワジワ攻めていく序盤戦のスタイルにはなりませんでした」(在阪メディア・記者)
岡田監督が怒った理由はこのあたりにある。単に「打てなかった」の結果論ではないのだ。
しかし、岡田監督は次の試合となる3日の千葉ロッテ戦でもノイジーを起用した。それに対して、「指揮官の温情、汚名返上のチャンスを与えた」と見る向きもあるが、首を傾げる声も聞かれた。
「いや、他に人材がいないのでは? 期待の新人・森下翔太が再昇格してきましたが、守備力も高い選手だからライトで使いたい。それにノイジーの代わりに3番を任せられる外野手となれば…」(球界関係者)
「交流戦初戦の5月30日、20歳の前川右京を二軍から昇格させ、いきなりスタメンで起用しました。ファームでは打撃好調でした。あわよくばレフトのレギュラー、せめてノイジーをリフレッシュさせる間だけでも代わりが務まればと思ったんじゃないですか」(同)
前川は期待に応えられなかった。森下をスタメンで固定し、J・ミエセスを鍛え上げていく案もあるそうだ。この時点では「ミエセス育成」よりもノイジーを復調させる方を選択したのだろう。
ロッテ戦・佐々木朗希に競り勝った
スタメン落ちを免れた6月3日のノイジーだが、5打席まわってきたがノーヒット。しかし「四球1、犠牲フライ1」で〝次の打者につなげる〟岡田監督のビジョンには反していない。「ズルズルといかない」ようにした同日の岡田采配だが、攻撃面で主だった点を挙げるとすれば、8回とサヨナラ勝ちを決めた11回だろう。
「先制点は阪神。試合中盤までペースを握りましたが、7回に1点差に詰め寄られました。が、8回にそれを突き放す攻撃が見られました」(前出・在阪記者)
サヨナラ勝ちを決めた11回もそうだが、阪神の猛攻には「四球」が絡んでいる。それは出塁、走者をためるなど形を変えて相手チームにダメージを与えている。
NPBのデータを見ると、阪神打線が奪った総四球数は190(6月4日現在)。12球団トップだ。ライバル巨人はリーグ1位の本塁打数60本を放っているが、総得点は196。阪神はその半分程度の28本しかホームランを打っていないが、総得点202。巨人を上回っている。岡田監督が「打線のつながりにウルサイ」のはそのためであり、最も気にしているところでもあるわけだ。
「4日のロッテ戦、佐々木朗希相手に競り勝ったのは大きいです。6回終了時点で佐々木から奪ったヒットはわずか1本。でも、5四死球を奪いました。佐々木に黒星をつけた6回の『1得点』は、先頭打者・中野が見極めた四球がきっかけとなりました」(同)
延長戦を制した前日の集中打と打線の粘りはホンモノだと証明した試合でもあった。やはり、阪神が独走態勢を構築しつつあるのは間違いない。
関係者が慎重になるのは、「投打ともにうまくいきすぎている」ため、反動を恐れているのかもしれない。慢心になるよりはマシ?
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